五淋散(ごりんさん)は、排尿時の強い痛み、残尿感、頻尿などの泌尿器系炎症に用いられる漢方薬です。
11種類の生薬が連携し、膀胱や尿道の「炎症を鎮める作用」と「尿量を増やして菌を押し流す作用(利尿作用)」を併せ持つのが最大の特徴です。
薬剤師の視点および漢方療法の観点から整理すると、以下のポイントが挙げられます。
- 薬剤師的考察(現代医療との連携・安全性)
西洋医学との併用・すみ分け
細菌感染による急性膀胱炎の場合、第一選択薬は抗菌薬(抗生物質)です。
薬剤師は、抗菌薬と五淋散を併用することで、症状(排尿痛や不快感)の速やかな緩和と、尿量増加による菌の洗い出しをサポートする観点で服薬指導を行います。
市販薬(OTC)での注意点
ドラッグストア等でも市販薬(ボーコレンなど)として入手可能ですが、服用後数日〜4日程度で全く症状の改善が見られない場合は、別の疾患(腎盂腎炎など)が隠れているリスクもあるため、速やかな受診を促します。
副作用のモニタリング
生薬の「甘草(カンゾウ)」を比較的多量に含むため、長期連用時には「偽アルドステロン症(血圧上昇、むくみ、手足のだるさ)」などの低カリウム血症に注意が必要です。
高齢者や他薬との併用時は特に注意が必要です。

- 漢方療法の観点(体質と症状の使い分け)
「熱・淋」の概念
五淋散は、中医学の「五淋(排尿困難や尿路の不快感を伴う疾患)」に対応します。
特に尿に濁りがあり、炎症や熱感(「熱」の証)が強い急性〜亜急性の症状に適しています。
他の漢方薬との使い分け
五淋散: 排尿痛や残尿感が強く、熱感や炎症症状が顕著な場合に選択されます。
猪苓湯(ちょれいとう): 炎症よりは「頻尿・残尿感」が主体で、体力があまりなく、尿の出が悪い方に適しています。
竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう): 体力があり、症状がより激しく、慢性化しているような頑固な炎症に用いられます。
慢性疾患へのアプローチ
過活動膀胱や間質性膀胱炎、繰り返す膀胱炎など、西洋医学の治療でもスッキリ改善しにくい慢性的な尿トラブルに対しても、体質改善を目的として長期的に重宝される処方です。
漢方薬は個人の体質(証)や現在の症状の強さによって最適な処方が異なります。







